2014年04月30日

こういう話を聞くと


 お仕事を頂いている編集プロダクションにある奇妙な都市伝説(?)が存在してる。若手社員の間でそれは「恐怖の喫茶店伝説」と呼ばれ、大変恐れられている。

 渋谷にあるこのプロダクションは細長いオフィスビルの七階に入居していた。
 ビルの各階には様々な会社が入居し、B1には小洒落た喫茶店があった。僕は一度だけバータイムの時に訪れた事があるが、とても雰囲気が良く居心地が良かった。ライムの効いたジントニックはとても美味かった思い出がある。
 そんな喫茶店をプロダクションの若手社員たちはとても恐れていた。もちろんそれにはきちんとした理由があった。

 ここのプロダクションは割と人の出入りが激しい。来るものを拒まない社長の方針が影響しているのだろう。
 その社長はチーフという立場で現場を回している。つまり自分が入社させた若手の働きを一番近い所で見ているのだ。これは一見、良いようにもとれる。しかしその一方ではマイナスに働く。ここの仕事に不適合だと判断されると非情にもスパッと解雇されるからだ。

 これは聞いた話なのだが、解雇される時にはある兆候があった。
 忙しい時間帯にも関わらず社長から直々にビルのB1にある喫茶店に誘われる。そして店に入るとこの店で一番美味いと言われるマンデリンが振る舞われる。その席で直々に解雇を言い渡されると言うのだ。これが皆が恐れる恐怖の喫茶店伝説の中身である。

 もちろんこれは不確定情報であり、噂にさえ創作を加える業界の体質も影響していると思う。辞めた人間から真相などは聞く術も無いからだ。
 ただ現実に彼らはこの噂を恐れ、社長から地下の喫茶店に誘われない事を祈っていた。

 こういう話を聞くと、ふーん、へー、あ、そう。ってな感じでつい気楽な自分の立場から同情半分面白半分に捉えてしまう。編集者と言えど会社員なんて悲しいものですね、なんてついほくそ笑んでしまう。こういう僕は本当に性格が悪い。

 先日そんなプロダクションの社長さんと打ち合わせをする事になり、渋谷のオフィスへと向かった。社内唯一の応接テーブルが他の打ち合わせで埋まっていた事もあり、社長さんから「地下の喫茶店に行こうか?」と誘われた。
 その瞬間、社内の全ての動きが止まった気がした。忙しく働いていた編集者たちの動きが止まったのだ。ははあ、これが噂の喫茶店伝説か、と僕は思った。皆が恐れるフレーズに、社内のみんながフリーズするのだ。これは確かに本物である。

 もっともそれを恐れるのは社員さん達であって、言わば出入業者である僕にはなーんら関係の無い事である。社長の後に続き、僕はオフィスを出て地下に向かうエレベーターに乗った。
 喫茶店に入ると社長はすぐにマンデリンを注文した。それはとても美味そうな響きだった。立場が違えばなんのその、である。

 コーヒーが運ばれてくると、社長はモノのついでとういう感じで口を開いた。
「実は記事を書いてもらってる雑誌が廃刊になってさ」
 え……えええええ? それって唯一のレギュラーワークが……
 うーむ、どうやら恐怖の喫茶店伝説は相手を選ばないようである。自分には関係ないとさんざん高をくくってきた罰なのか? 何にしても困ったものである。あーこりゃこりゃ。



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